あのレジェンドCBも絶賛「いい成長曲線に…」
サウジアラビアは日本の最終ラインにもプレッシャーをかけてこなかった。だからといって、焦ってボールを失えば乾坤一擲のカウンターを発動させてくるかもしれない。時間が経過していくなかで、白いユニフォーム姿のサウジアラビア選手数人の隙間で、田中が顔をのぞかせた瞬間を見逃さなかった。
もっと縦パスを入れる場面を増やしたかったのか、という問いに高井は冷静に答えている。
「中を固められていたので、簡単に両サイドへパスを振る、という選択肢がやはり多くなりました。相手が5バックで、しかもああいう形でブロックを作られてきたら、どのチームも崩すのは難しいと思うので、もっとアイデアをもつとか、共通意識をもつなどして、これから質を高めていきたい」
大きな爪痕を残したいと誰もが望む代表初先発で、心憎いほど冷静沈着にプレーした。現役時代はCBを中心にプレーし、プロ契約直後から高井を見てきた日本サッカー協会の宮本恒靖会長が目を細める。
「プレーが常に的確で、判断を間違えない。自分が初めて幸大を見た2022年の夏に比べても、Jリーグで自信もつけている。顔つきもコメントもまったく違うし、いい成長曲線にあると思う」
パリ五輪(パリオリンピック)を戦い終えた直後の昨年9月。アジア最終予選に臨む森保ジャパンに初めて招集され、20歳になった翌日の同5日の中国代表との初戦で、4-0で迎えた71分から板倉に代わってデビューした。
続く敵地でのバーレーン代表戦をリザーブで終えると、10月シリーズは招集されながら怪我で辞退。敵地での連戦となった11月シリーズはインドネシア、中国戦ともにベンチから外れ、先のバーレーン戦でもリザーブのまま、8大会連続8度目のワールドカップ出場を決めた喜びをベンチで分かち合った。
そして、同じ埼玉スタジアムを舞台に中4日で迎えたサウジアラビア戦。バーレーン戦から6人が入れ替わった先発陣のなかに、チーム最年少でもある高井も初めて名を連ねた。緊張感はなかったのか、と問われた高井は「ありましたけど、それを力に変えられたと思います」とこう続けている。