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コラム 1週間前

ラッシュフォードをアストン・ヴィラが変えた。「努力をしない選手」の烙印から2ヶ月…。イングランド代表復帰の理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

ラッシュフォード加入によって広がった戦術の幅

 ラッシュフォードが出場していない439分間で6得点しか生まれていないのに対して、出場した461分では11得点が生まれている。これは決して偶然ではない。ラッシュフォードを起用することで、チームとして得点力と機能性が上がっているのだ。

 その理由は戦術的な幅が広がったことが要因として大きいと推測している。

 守備時は[4-4-2]、攻撃時は[3-2-5]に可変することがチームの枠組みとして決まっている中で、ラッシュフォード加入以前は左サイドバックのルカ・ディーニュ、もしくはイアン・マートセンが左の大外のレーンで幅を取る「左肩上がり」の可変がほとんどだった。

 その理由はチームに左のワイドに張って仕掛けることを得意としている選手がいなかったから。ロジャーズとジェイコブ・ラムジーが左ウイングで起用された場合は、1列インサイドに入って左SBの選手が上がるスペースを作り出していた。

 ただ、先述した通りラッシュフォードは左の大外のレーンでプレーしている。これによって可変のバリエーションが変化。右サイドバックのマティ・キャッシュ、もしくはアンドレス・ガルシアを高い位置に上げる「右肩上がり」の戦術も積極的に使うようになった。

 ラッシュフォードとマートセンが同時に起用されることが多いのはそのためである。23歳のオランダ代表DFはバーンリーにローン移籍していた時代に、ヴァンサン・コンパニ監督の下で[左肩上がり]と[右肩上がり]のどちらの[3-2-5]可変を経験しており、内側のレーンでのサポートもスムーズだ。

 ラッシュフォードとラムジーが明確にプレータイムを分けているのは、この2つの戦術を時間帯によって使い分けているから。マンマークで相手を捕まえるのが欧州の戦術のトレンドとなっている中で、アストン・ヴィラは選手交代によって大きく立ち位置を変えている。

 その結果、相手のマークを意図的に外して、攻撃の火力を上げることが可能となった。ラッシュフォードが後半開始から登場して2アシストを記録したプレミアリーグ第26節・チェルシー戦がその代表例だろう。

 ここまではピッチ内の視点から活躍の理由について考察してきたが、アストン・ヴィラはピッチ外でもラッシュフォードがプレーしやすい環境づくりをしている。

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