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Jリーグ 1か月前

知念慶は「人にないものを持っている」新・鹿島アントラーズでもう一段階上に行くために。「どれだけボランチで…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「今年のオニさんが目指すサッカーの中で…」

 その言葉は宮崎キャンプの時に指揮官が語っていたことだが、「知念には非凡な得点能力がある」という確信があったに違いない。今回はケガによる異例の措置ではあったが、「知念を前に置けば追いつける」という信頼がなければ、こういった起用はしないはず。その期待に背番号「13」はしっかりと応えたのである。

 ランコ・ポポヴィッチ監督体制だった昨季、ボランチとして新境地を開拓し、大成功を収めた知念だが、今季はここまで必ずしも順風満帆というわけではなかった。2月15日の開幕・湘南ベルマーレ戦まではスタメン組に入っていたが、この一戦を落としてからは樋口雄太にポジションを奪われる形になり、後半途中から出るという立ち位置になっていた。

「今年のオニさんが目指すサッカーの中で、僕個人としてはまだ技術が足りないなと思っている。しっかり練習でそういう部分を伸ばしつつ、自分の長所を出しながらアピールしていきたいなと思っています」と本人もFC東京戦後に苦渋の表情を浮かべていた。

 タテにボールをつけるという部分に課題を抱えていたのは紛れもない事実。川崎F時代に中村憲剛や大島僚太と共闘していた選手だけに、鬼木監督がボランチに何を求めるかというのを本人も強く理解していたはずだ。高い領域を追い求めるあまり、攻守のバランスの最適解を見出せずに苦しんでいたのだろう。

 その問題はまだ完全に解決したわけではない。ただ、知念が他のボランチにはない「得点力」「決定力」を持ち合わせていることは改めて証明された。今季鹿島には鈴木、レオ・セアラ、チャヴリッチ、徳田、田川亨介とFWが数多くいる。

 そのため、今回のように知念が最前線で使われるケースは多くないかもしれない。しかし、そういったオプションがあることを示せたのは、今後に向けてポジティブな要素と言っていい。

「連勝は止まりましたけど、今日みたいなゲーム内容の試合もある。相手がいることなんで毎試合うまくはいかないけど、少しずつ経験を積んで成長していっていると思うので、今日出た課題を生かしつつ、もっと自分たちの強みを出せるように、またいい準備していきたいと思います」

 知念はこんなコメントを残してスタジアムを後にしたが、それは自分自身に課している命題でもあるのだろう。彼が柴崎岳と樋口というボランチコンビに割って入り、先発を奪還し、さらに点も取ってチームを勝利へと導くことができるスーパーボランチになれれば、鬼木監督の安心材料も増えるはず。

 代表ウィークを挟む2週間でしっかりとケガを治し、自分自身をブラッシュアップさせること。そこに集中してほしいものである。

(取材・文:元川悦子)
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