まさに“適材適所”。前任のイヴァン・ユリッチとは全く異なる采配
前任者のユリッチは、サイドバックやウィングバックを主戦場とするアンヘリーニョを3バックの一角で採用するなど、“奇策”を講じた。おそらく、師のジャン・ピエロ・ガスペリーニが、3バックの左右DFに、サイドバックを配置する采配を模したものだろう。
しかし、技術力の高いアンヘリーニョは、ビルドアップの面では申し分なかったが、1メートル71の体格では、このポジションを任されるのは無理があった。しかも昨夏に加入した世界的CBのマッツ・フンメルスをベンチに追いやっての起用で、奇をてらったものでしかなかった。ラニエリはこのような“愚策”はせず、まさに適材適所といった納得の配置を行い、選手たちが本来備えているポテンシャルを引き出すことに成功している。
「全員がレギュラー」とラニエリ自身が強調するように、ターンオーバーを巧みに使い分け、それまで“干された”フンメルスをも戦列に取り入れ、チームの戦力を拡大させた。アンヘリーニョも従来のポジションに戻って以降、公式戦で4ゴールと2アシストを記録するなど、折れていた翼を取り戻した。
右ウィングバックのゼキ・チェリクは、序盤戦で精細を欠き、度々非難の的となったが、UEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメントプレーオフ、ポルトとの第1戦では、貴重な先制点をマーク。ローマに加入して初めてのゴールを記録した。アスレティック・ビルバオとのベスト16、第1戦では、3バックの右DFを務め、スピードスターのニコ・ウイリアムスを封じ、称賛を得た。
また、3000万ユーロ(約48億円)での獲得はあまりにも高い買い物だったと揶揄されていたマティアス・スーレも、その金額に見合うだけのパフォーマンスを見せはじめている。パルマ戦で決めたFKは、芸術的なもの。評価が高まる鈴木彩艶が一歩も動けないスーパーゴールだった。
そして、冬の移籍市場で、放出の噂のあったエルドル・ショムロドフも再生した一人だ。