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Jリーグ 1週間前

「もっとできたよ」喜田拓也は勝利後に呟いた。横浜F・マリノスは変われる。現状を打破するために起こした行動【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 photo by Getty Images

「言ったとおりになりましたね」「そういう戦いを追い求め続けたい。それがマリノスだから」

 今季の初戦、ACLEリーグステージ MD7の上海申花戦で前半に負傷交代し、戦列から離れざるをえなかったが、ACLEラウンド16の第1戦を終えて全体練習に合流すると、言動でチームを変えていこうとした。

 そして1ヶ月ぶりにメンバー入りを果たす。喜田がベンチから見守ったチームは第1戦で得ていたリードを開始わずか2分に広げると、2戦合計で3-0とした後にCKから1点を返されたものの、得点を重ねて大勝した。

「言ったとおりになりましたね」

 取材エリアに真っ先に姿を見せた喜田は、出場していないにもかかわらず報道陣に囲まれると、そう第一声を発しながらふっと笑った。

 前日の言葉の数々は、我々報道陣の問いに対する答えでありながら、メディアを通してチームメイトに伝えたいことでもあった。当然、直接伝えてもいるのだが、耳だけではなく目からも伝え、共通認識をより強固なものにしたいと考えていた。

「マリノスが何を大事にしてきたのか。攻める姿勢を求め続けてきた。選手もそれに誇りを持ってきたし、見ている人たちがマリノスの何に共感してくれたかって考えると、堂々と最後まで戦う姿勢だったり、何点差であろうと得点を追い求め続ける姿勢だったり、もちろん守備でやらせないこともそうだけど、全員で一体となってまっすぐ戦い続けることだと思う」

 どれだけのチームメイトがメディアを通して自分の言葉を見てくれたかはわからない。ただ、その先にどんなチームがあるか、希望を少しだけ込めた予測ができていたからこその言葉でもあった。

「そういう意識で絶対変われると思っているし、自分もその覚悟で言いましたから」

 ただ、大勝した試合でありながら、試合後にあらためて認識をすり合わせたのは、喜田自身が試合終了直後に感じたことだった。
 
「もっと支配したい。もっと圧倒したい。もっと攻め込みたい。そういう戦いを追い求め続けたい。それがマリノスだから」

 ピッチに立っていた選手には当然、サウジアラビア行きの切符をつかんだ安堵感もあった。その一方、満足している様子はなかった。

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