上福元直人のビッグセーブにあった影の立役者

「コースはあそこしかないと思って、相手にとってのニアのコースをとにかく潰しにいこうと」

　上福元の視界にはもう一人、山下へ必死に体を寄せる味方の姿も映っていた。落下地点に入ってきたクロスには触れなかった。それでも、鈴木雄斗は山下に万全の体勢でシュートを打たせなかった。

「最後に（鈴木）雄斗がぎりぎりまで競り合ってくれて、シュートコースを限定してくれた。雄斗のファインプレーだと思っている。もちろん相手に触られないのがベストかもしれないけど、最後の粘り強さや執着心をああいう場面で出してくれたおかけで、自分の守りやすさといったものにつながった」

　鈴木雄に感謝した上福元は、さらに想定外のプレーに直面した。目の前のニアサイドへのヘディングシュートを放てば阻止されると判断した山下が、ボールをヒットする瞬間に体を捻り、ゴールの真ん中を狙ってきたからだ。今度は自分が鈴木雄のプレーに応える番だったと、上福元が声を弾ませた。

「無理をしてでも逆に振ってきたというか、あえてコースを変えてきた。本当にぎりぎりのタイミングでしたけど、とっさの反応で間に合ったというか、対応できたのはよかったと思っている」

　勢いがついた体は止められない。それでも必死に左腕だけを残した上福元は、山下のシュートをはたき落とした。右ポストに激突しながらビッグセーブを演じた上福元はすぐに立ち上がり、感謝の思いを込めた大きな声を届けている。それに応えた鈴木雄は、スコアレスで引き分けた試合後にこう語っている。