功を奏した割り切った采配
パリ・サンジェルマンはデンベレがワイドに流れることでサイド攻撃の厚みを持たせていたが、逆に中央からの攻略はストライカーが不在の影響もあってできず。結果的に攻撃のパターンがサイド一辺倒となってしまった。
これに対してリバプールはサイドを突破されることはある程度は許容しつつ、中央を固めることでボックス内での被シュート数を減らす展開に持っていった。
実際にシュートを打たれた箇所を見ると、28本のうちボックス内で打たれたのはおよそ3分1にあたる9本。それでも多いが、フィルジル・ファン・ダイクとイブラヒマ・コナテの両CBはサイドに釣り出されず、常にゴール前を固めていたことで、シュートコースを限定できているケースが多数だった。
スロット監督も試合後に「枠内シュートも多かったが、主にボックスの外からのシュートだった。これは試合前からわかっていた」とコメントしており、ボックス外からのミドルシュートはアリソンのセービング能力の高さ“ありき”ではあるが、ある程度は許容していたと考えられる。
2ndレグにホームゲームを控えていることを踏まえると、この試合のリバプールは無理に得点を奪いにいく必要性はなく、交代策も守備に重きを置いた割り切ったものに。通常はリード時に起用することが多い遠藤航も同点時の79分に投入しており、引き分けでもOKという采配だった。
この試合展開で、途中投入のダルウィン・ヌニェスとハーヴェイ・エリオットの2人でゴールを決めて、リードした状態でホームに帰れるのはこれ以上ない結果だった。
パリ・サンジェルマンの地力を考えると、アンフィールドでの試合だろうと油断はできないが、リバプールのベスト8進出に近づいたことは間違いないだろう。
(文:安洋一郎)