アカデミー出身の選手の在り方の変化
【写真:Getty Images】
かつてはトップチームの戦力化を図るために「育てる」ことがアカデミーの重要なテーマだったが、現在はそれが叶わなかった場合に「高額で売ること」も視野に入れなければいけない。
このトレンドの変化は2015/16シーズンに導入されたPSRが影響していると推測している。
プレミアリーグの利益と持続可能性に関する規則であるこのルールにおいては、3年間の合計損失が1億500万ポンド(約199.5億円)以内に抑えることが義務付けられており、違反したクラブは昨季のエバートンやノッティンガム・フォレストのように勝ち点はく奪処分などのペナルティが課される。
PSRを遵守するために手っ取り早いのがアカデミー出身の選手の売却で、獲得コストが「0」のため、売却益がそのまま育成クラブの利益として計上される。
このやり方を上手く活用しているのがマンチェスター・シティで、115件の財務規定違反疑惑があるとはいえ、彼らがアカデミー出身選手や青田買いした選手を他クラブに売却する上手さは本物だ。
アーリング・ハーランドやカルヴィン・フィリップス、マヌエル・アカンジ、セルヒオ・ゴメスを獲得した2022年夏の移籍市場にて、彼らは移籍金の収支だけで7300万ユーロ(約116.8億円)のプラスを計上した。そのうちトップチーム出場歴のない選手だけで、7100万ユーロ(約113.6億円)の売却益を生み出している。
一方のユナイテッドはアカデミー出身の選手を大切にする文化の影響も相まって、簡単には地元のスター候補を他クラブに売却していないと予想している。そのため売り時を逃す傾向が強く、期待の有望株がフリーで新天地を求めることも少なくない。