「いまはポジションが違いますけど」。小学生の頃の憧れの選手は…
「クロスをあげるかどうかで迷いましたけど、ここでシュートを打つのが自分だと思ったので。ファーへのコースもはっきりと見えたし、自分が得意とするコースでもあるので、自信を込めて打ち抜くだけでした」
コンパクトかつ鋭いスイングから放たれた強烈な弾道は、山形のキーパー長谷川洸の両手を弾いて反対側のゴールネットへ突き刺さる。J3のアスルクラロ沼津から完全移籍で加入して2試合目。まばゆいスポットライトを浴びた津久井は、観戦に訪れていた両親と姉へ投げキッスを捧げて至福の喜びを伝えた。
群馬県太田市で生まれ育った津久井は小学生のときに、埼玉県熊谷市を活動拠点とする江南南サッカー少年団で本格的にサッカーをはじめる。当時のポジションはフォワード。映像を介して何度も見た少年団の大先輩で、いま現在は浦和レッズに所属する原口元気の勇姿がいつしか目指すべき目標になった。
「いまはポジションが違いますけど、どんどん仕掛けていく大切さは小学生のころに学びました」
中学卒業後に横浜F・マリノスユースへ加入し、高校在学中だった2020年7月には、翌春の卒業を待たずしてプロ契約を結んだ。アカデミーに所属する選手がプロ契約を結ぶのは、実はマリノス史上で初めてだった。大きな期待が寄せられたが、出場機会を得られないままルーキーイヤーを終えた。
翌2021シーズンからは、日本フットボールリーグ(JFL)のラインメール青森へ期限付き移籍。2年間の武者修行をへて、2023シーズンに再び期限付き移籍したJ3の沼津で運命的な出会いがあった。日本代表の伝説的なストライカー、中山雅史監督のもとでゴールを奪うための動きを徹底的に叩き込まれた。