「J2とJ1は相手の違いもありますけど…」
「あれは本当に決めたかった。本当に悔やまれるシーンだと思います」と本人も試合後、語気を強めていたが、J1で活躍できるか否かというのは、こういうところで決め切れるかにかかってくる。それはJ1で数々の壁にぶつかり、悔しさを味わってきた彼にはよく分かっていることだ。
「あの1シーンで流れが変わったと思いますし、ああいうところで決められるようになっていきたい。J2とJ1は相手の違いもありますけど、今までやってきたことを続けて、よりよいものにしていくことが大事だと思います」と一美はもう一段階の飛躍を心に誓っていた。
結局、岡山は0-1で敗戦。開幕2連勝とはならなかった。木山監督も「我々はプレーオフで昇格したということで、J1では20番目のチーム。多くの人から見れば、『残留争いをするチーム』。でも、それを目標にするんじゃなくて、今の自分たちを追い越していかないといけない。
つねにチャレンジが必要ですし、今の力でずっと勝ち続けられるほどJ1は甘くない。今日のような試合を粘り強く戦って1ポイントを取るしぶとさを身に着けていかないといけない」と毅然と前を向いていた。
「今の自分を追い越す」という点は、一美を筆頭に、J1で確固たる実績を持たない面々全員が取り組んでいくべきことだ。
「今の岡山はJ1が初めてという選手も何人かいますけど、そういう経験値は関係なしに、自分も一緒の立場で引っ張っていきたいと思います。個人としても結果を残して、岡山をもっと上のチームに引き上げたい。それを1年間通して意識していくつもりです。
ここに来て、自分はまだ半年ですけど、試合を重ねるごとにチームの凄さ、県民のサポートというのをすごく感じます。だからこそ、このチームでJ1の上の方に行きたいし、優勝もしたい。全て可能性はあると思うんで、チーム一丸となってやっていきたいです」
一美の言葉はチーム全員に共通する思いだろう。今回の悔しい敗戦、そして無得点試合を経て、彼らはどのように点の取れる集団へと変貌していくのか。ここからの変化を興味深く見守りたいものである。
(取材・文:元川悦子)