鬼木スタイルの本質を考える。活かされた前節の反省

「相手のストロング（ポイント）が必ずストロングになるわけではない。そういう意味で、それをしっかり利用しながら、自分たちの狙いを持つこと、ストロングを出させないことが必要だった」

　鬼木監督のスタイルとして、良くも悪くも“ティキタカ”のようなショートパスを中心にしたスタイルが一般的には連想される。だが、おそらくそれは表現の1つの形にすぎず、本質はもっと根っこのところにあるのだろう。鬼木監督はよく「相手を見て判断する」「相手の矢印の逆を突く」といった表現を使う。

　もちろん、そのための選択肢としてショートパスがあり、止める・蹴るといった技術向上は選択肢を増やす上で欠かせないものだが、根っこには相手の嫌がるものを選び続ける判断力が求められている。

　そして、それをまさに体現したのが小池だったのではないだろうか。両サイドバックでもプレーでき、横浜F・マリノスではボランチに入ることもあった。そして、この日はサイドハーフとして戦術的な核になった小池は宮崎キャンプの練習試合でも周囲を活かすプレーと、相手の嫌がるプレーで存在感を放っていた。コンディションが万全でさえあれば、常にピッチに置いておきたい存在だろう。

　とはいえ、チーム全体として理想とする戦い方が一朝一夕でできるものではない。鬼木監督は川崎フロンターレで就任1年目から優勝という結果を収めたが、それは前任者である風間八宏元監督のもとで築き上げられた土台があったからこそ。「目指すは相手を圧倒する。それと同時に我慢強く戦っていくのも目指していく部分の1つ」と湘南戦後に鬼木監督は話していた。