骨盤に上半身の重さを乗せることは大前提。もう1つは…
1つは、上半身の姿勢を保持したまま、骨盤(座骨)に重さを乗せて股関節から身体を折りたたむこと。これが大前提で、もう1つは足指で地面をしっかり掴むようにして曲げた足首を安定させること。上半身の重さを座骨で受けて、下半身の重さを足裏で支えているようなイメージです。
これらの質が高いと、上半身と(股関節と足首の間にある)膝周りの無駄な力がスッと抜けて股関節の自由度が高くなるため、低い構えからでも骨盤と股関節が連動したスムーズな動き出しが可能になるのです。
前述のバイエルン戦のシーンでは、上半身を起こしながら左脚で前方にステップを踏み、右脚を伸ばして身体の重さを乗せてタックルする、という同時並行的な動きでボールを奪取しています。簡単そうなプレーに見えますが、両方の股関節がスムーズに動いてこそ可能となるハイレベルなプレーです。
佐野の守備でのアプローチは、相手選手との距離感をはかりながら素早く『膝を抜く』ことで急減速してピタッと止まり、低い構えからそのまま並行移動しているような無駄な上下動が少ない動きが特徴的です。
ただし、低重心での動き特有のもたつくような鈍重感がなく、むしろ軽快にステップを刻んでタイミングを見計らい、跳ねるように鋭く加速した勢いそのままに相手の懐に潜りこんで身体を入れる、または脚を伸ばしてボールを刈り取る。というボール奪取のシーンは、見ていて爽快感があります。
このような動きをするためには、上半身の姿勢と体幹部分の安定性に寄与する腹〜腰回り、特に骨盤を保持しながら脚の重さをコントロールする下腹部の深層筋群(腹横筋・腸腰筋)の発達と、着地時に地面に加えた力を跳ね返す足首の強さが必要不可欠です。
他のトップレベルの選手と同様に、佐野も脚力の土台となる殿部や大腿の筋肉がたくましく発達していますが、身体の中心にあたる骨盤と自重を下支えする足首の安定性の高さによって、股関節主導でのバネ感のある多彩なステップや推進力が生み出される、というメカニズムです。