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Jリーグ 2週間前

「サッカーができる幸せを…」ヴィッセル神戸、齊藤未月は539日ぶりのピッチに何を思ったか。「だからこそ今度は」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「そこ(対人)への怖さは…」

「そこ(対人)への怖さはまったくなかった。思っていた以上に、と言ったら変ですけど、キャンプの練習試合を含めて一番よかったと思うし、同時にもっともっとできる、という感覚ももてた」

 さらにリードを2点に広げられて迎えた77分。神戸の左CKをニアでクリアされ、そのまま途中出場していた明治大卒のルーキーで、スピードを武器とするFW中村草太につながった直後だった。

 真っ先に反応したのは、敵陣のバイタルエリアにいた齊藤。全力で追走し、最後は右タッチライン際で迷わずにタックルを仕掛ける。繰り出したのはテーピングを厳重に巻いていた左足だった。

 中村の足を刈ったとして警告を受けた齊藤は、ボール奪取と紙一重の攻防をこう振り返った。

「足がすごく速い選手なのはわかっていたけど、試合終盤のあの時間帯で、ボールを奪いきれる状況までもっていければベストかなと思っていたし、それができそうな感覚もあったので」

 すべてをポジティブにとらえる思考回路を、齊藤は2年前の夏からフル稼働させていた。

 左膝の負傷の詳細が関節脱臼、複合靱帯損傷と内外側半月板損傷で、さらに複合とされた内訳が前十字靱帯と外側側副靱帯、大腿二頭筋腱付着部の断裂と、膝窩筋腱と内側側副靱帯、後十字靱帯の損傷とされ、先述したように全治約1年と発表された直後。齊藤は自身のインスタグラムでこんな思いを綴った。

「とにかく今はゆっくり時間をかけて復活するためのプランを自分の中で考えておきます!どこかで僕に会った時は悲しい顔をせず笑顔でエネルギーを僕にください!全部部吸い取って強くなるので」

 不安がまったくなかった、といえば嘘になる。本音に近い思いも、齊藤は広島戦後に明かした。

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