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昨季のラウタロ・マティネスはインテルをリーグ優勝に導く見事なパフォーマンスを披露した。しかし、今季は自身の得点数は減少気味。それでも、「調子が良い」と語るにはある理由があった。それがラウタロが唯一手にしていないタイトル獲得につながると信じて、そして、インテリスタの夢を叶えることにもなると知って。(文:佐藤徳和)
誰よりも漢気があるラウタロ・マルティネス
2023年7月29日。インテルのジャパンツアーにおける、ある忘れがたい光景だった。
じりじりと照りつける灼熱の太陽の下、インテルの選手たちは過酷なトレーニングに身を投じていた。異国の地での練習の締めくくりは、ハーフコートを使った繰り返しの走り込み。プロフェッショナルであっても疲労の色を隠しきれないほどの厳しさだった。
ロッカールームへと引き上げる選手たちに問いかけた。
「今日のトレーニングはきつかった?」
ホアキン・コレアは苦笑いを浮かべ、「とてもきつかった」と答えた。助監督のマッシミリアーノ・ファッリースも「今日は非常にきついトレーニングだった」とニヤリと笑う。
しかし、その言葉を後方から打ち消すように、力強い声が響いた。「そんなことはない! 普通のトレーニングだ!」。ラウタロ・マルティネスだった。
サミール・ハンダノヴィッチの後を継ぎ、新たな主将としてチームを牽引する立場となっていた。トレーニングに臨むその姿は、まるでUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝戦を目前に控えた戦士のようだった。鋭い眼光、引き締まった表情。その一挙手一投足から滲み出るのは、強い覚悟と揺るぎない決意だった。
その前シーズン、FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022では、アルゼンチン代表の優勝メンバーとして歴史に名を連ねることは叶ったが、本大会でゴールを挙げることはできなかった。セリエAでは優勝したナポリの独走を許し、3位に終わった。CLでは、決勝に駒を進めたものの、マンチェスター・シティの前に屈した。それだけに、ラウタロの新シーズンに掛ける意気込みは、並々ならぬものだったに違いない。