プレミアリーグ内での引き抜きが困難に
ほとんどのクラブが「売り手」ではなく「買い手」である。財政状況を整えるために中心選手の売却を余儀なくされる例もあるが、ビッグ6のクラブが他の14クラブから主力選手を引き抜くことの難易度とコストは10年前と比べると上がっている。
実際に10シーズン前の2014/15シーズンを見ると、ビッグ6が他の14クラブの主力クラスを引き抜いたケースが10件あった。それが今シーズンは夏に動いたペドロ・ネト(ウルブス→チェルシー)、キアナン・デューズバリー=ホール(レスター→チェルシー)、ドミニク・ソランケ(ボーンマス→トッテナム)の3件のみ。冬の移籍市場では1例もなかった。
他の14クラブ内でもマックス・キルマン(ウルブス→ウェストハム)やアマドゥ・オナナ(エバートン→アストン・ヴィラ)などの移籍もあったが、最低でも4000万ポンド(約76億円)程度は必要となる。この金額があれば、後釜を確保することは十分に可能だ。
中国資本のウォルバーハンプトン・ワンダーランズのように、オーナーの拠点となる国の経済悪化が財政状況に直結して苦戦しているクラブもある。だが、そのほとんどがプレミアリーグに残ることさえできれば、戦力を維持、もしくは上積みをすることができている。
プレミアリーグ内で主力クラスの引き抜きが減少しているのは、2015/16シーズンから導入されたPSR(過去3シーズンの損失額の上限を1億500万ポンド〈約199億円〉以内に抑える必要があるプレミアリーグの財務規定)によって「買い手」側の支出額に限度があることや、新たな「買い手」であるサウジアラビアの存在によって、プレミア外に高額の移籍金収入が見込めるリーグが増えたことが影響しているだろう。
PSRやサウジアラビアの存在は意見が分かれるだろうが、兎にも角にもプレミアリーグ全体のレベルが上がっているのは紛れもない事実だ。