90分を通して走り勝ったアーセナル
マテオ・コバチッチがアーセナルのバイタルエリアに突っ込んでロストしたところからカウンターが始まると、ボールを持ったデクラン・ライスと並走する形でマルティネッリが前線へとスプリント。最後は約70mを走った上でヨシュコ・グヴァルディオルに走り勝ち、枠内に惜しいシュートを放った。
この場面を筆頭にシティはトランジションが弱点であるにも関わらず、ボールの失い方があまりに悪い。76分に喫した4失点目もアーセナルのゴール前でボールを奪われてからマルティネッリの推進力を活かしたカウンターを受けており、中盤のフィルターがかからないまま、調子の悪いCB陣が対応しなければいけない状況に陥っている。
ボールの失い方が悪い究極が57分に喫した2失点目のシーン。フィル・フォーデンのパスミスをトーマス・パーティーに奪われて、そのままミドルシュートを決められた。ほかにも、本来はフィルターになって欲しいアンカーのコバチッチが、ドリブルで突っ込んだところを奪われてからカウンターを喫するなど、自分たちで苦手な場面を作り出してしまっている。
一方でアーセナル側の視点に立つと、ウーデゴールを軸とした強度とパスコースを消す練度の高いハイプレスで相手のビルドアップを妨害し、シティの弱点が出やすい形を誘発していたと言える。
試合を通してボールを失った直後の強度と切り替えの早さは両軍の間で明らかな差があり、メンバー構成と相手の弱点を狙い定めたプランニングもアルテタがペップを上回った。
この5-1の大勝でアーセナルは、ペップ率いるシティへの苦手意識を完全に克服したのではないだろうか。首位リバプールとは最大で勝ち点「9」の差があるが、逆転での優勝に向けてはチームを勢いづかせる最高の勝利となった。
(文:安洋一郎)