遠藤航がレギュラーになれない理由
遠藤自身からすると手痛かったのが、45分に見られた自陣でのボールロストだ。相手選手にフィジカル負けする形でボールを失うと、リバプールの他の選手たちもそれをカバーすることなく失点を喫した。
クロップ前政権での遠藤は、両CBの間に降りてビルドアップに関わることで、得意とは言えない狭いエリアでのキープやターンをする役割を与えられていなかった。
一方スロット体制におけるアンカーは、相手FWと中盤の間に立つことが徹底されており、狭いエリアでのキープやターンが得意であることが重要だ。その点において優位に立つライアン・フラーフェンベルフとアレクシス・マック・アリスターが優先的に起用されている。
この失点に関与したシーンは、レギュラー候補の2人と遠藤のプレス回避能力の差が出た最たる例で、日本代表MFがスタートから起用されない理由が集約されたシーンと言える。
この試合で遠藤の“現在地”が良くも悪くも明らかになった。しかし、悪かった点を悲観する必要はない。
今の遠藤にリバプールで求められているのは、中盤でのプレス回避能力ではない。主力選手の温存や終盤に試合をクローズさせることなど、チームのために貢献することが彼の役割だ。幸いにも先発候補には他の選手がいる。
そういった点では自らに与えられた役割を実行しており、スロット監督の期待に応えたと言って良いのではないだろうか。
(文:安洋一郎)