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コラム 4日前

「この移籍は必要だった」ナポリはなぜクヴァラツヘリアの移籍を容認したのか? その背景にはある意外な選手の存在も【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

クヴァラツヘリアはもはやチームの中心ではなかった

 とりわけ、左サイドからの仕掛けは相手チームにとって“絶望”を意味した。一人で局面を打開できるドリブルに、為す術がないDFが次々となぎ倒されていく様は、まるで時代劇の殺陣で、斬られ役がバタバタと倒れていくようなシーンを見ているようだった。

 人々は、ナポリの神、ディエゴ・マラドーナの姿に重ね合わせ、“クヴァラドーナ”の異名で讃えた。3度目のスクデット獲得の立役者の一人となり、リーグによるMVPにも選出された。26得点を奪って得点王に輝いたヴィクター・オシムヘンも不可欠な存在であったが、クヴァラツヘリアのこのシーズンのパフォーマンスは、大きなサプライズだった。

 2年目の23/24シーズン、ルチアーノ・スパレッティ監督が去ったチームは、不振を極め10位まで順位を落としたものの、クヴァラツヘリアは孤軍奮闘。リーグ戦で11得点と8アシストの成績を残し、1年目の活躍が偶然ではないことを知らしめた。そして、3年目は、優勝請負人のコンテが指揮官に就任。凋落したチームを見事に立て直し、優勝争いを演じられるまでに蘇らせた。

 しかし、クヴァラツヘリアは、途中交代に怒りを露にするなど、コンテの采配に不満を募らせていた。2027年6月30日までの契約延長交渉は難航。ナポリは、チームトップの報酬を受けるロメル・ルカクと同額の600万ユーロ(約9億6000万円)の年俸を提示したが、それでも彼は首を縦に振らず、800万ユーロ(約12億8000万円)の要求を頑なに主張し続けた。

 一方、ナポリが優勝争いを演じているにもかかわらず、苦渋の決断ではあるが、クヴァラツヘリアの退団を容認した背景には、ダヴィド・ネレスの台頭がある。

 昨年夏にベンフィカから2800万ユーロ(約44億8000万円)の移籍金で加入したブラジル人アタッカーは序盤戦こそ途中出場が多かったものの、次第に出場機会を伸ばし、主戦場の右サイドだけでなく、ジョージア代表FWの代役として左サイドでも非凡な能力を発揮した。

 クラブは、レフティーのネレスをクヴァラツヘリアの代役として使える公算が高いと判断したのだろう。つまり、彼はもはやナポリのプロジェクトの中心ではなかったのだ。そのため、本人が望んだ通り、シーズン途中にもかかわらず、エースの放出に踏み切ったと言える。

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