サッカーの本質とは? 「僕は放っておいてほしかった」
「近年はハードワークや球際という言葉がクローズアップされるように、プレーの強度に比重が置かれていると感じます。だけど、サッカーの本質はいかにゴールを入れて、守るのか。その大前提に立ち返って考えれば、別にハードワークをしなくても、点が取れればそれでいいわけです」と。
「サッカーはシンプルな競技」と考える柿谷も昨今のトレンドや方向性にどこか違和感を覚えていた様子。ここ5年くらいは純粋にサッカーが楽しいと思えなくなることもあったという。
「今は良くも悪くも『選手がサッカーをしている』というより、『させられている』というのかな。90分間で自分のやることが決まっているようなサッカーになってるじゃないですか。でも僕は90分間放っておいてほしかった。やっぱり『戦術』って言葉があまりにもミーティングで出すぎるんで、それについていくのもしんどいし、『なんかこれサッカーちゃうやん』って思ったんですよね」と柿谷は神妙な面持ちで言う。
顕著な例と言えるのが、2023年頭に名古屋を離れて、徳島ヴォルティスへの2度目の移籍に踏み切った時。就任したばかりのベニャート・ラバイン監督は生粋の戦術家で、柿谷は懸命に指揮官が言わんとすることを理解しようと何度も話し合いの場を持った。