「クライフの14番を背負ってプレーすることはとても特別なんだ」
34歳で迎えた1981年6月、イタリア放送局『カナーレ・チンクエ』によって創設された『ムンディアリート』にミランの招待選手として参加している。6月16日のフェイエノールト戦でピッチに立ったが、負傷のため前半限りで交代を強いられ、出場はこの1試合に留まった。ミランとの契約の可能性もあったが、けがの影響もあり、ミラン入り実現は露と消えた。
タイアニは背番号を選んだ経緯をこのように話す。
「僕にとっては6番がファーストチョイスだ。だけど、ミランのレジェンドの背番号を背負うことはできないよね。それで、僕らオランダ人にとって、とても重要な選手であるクライフの14番を選ぶことにしたんだ」。
マドリディスタを沈黙させた11月のマドリー戦は、52本のパスのうち51本を成功。4本中4本のロングパスも見事に通し、2本の決定的なパスを放った。そして極めつけは、試合を決定づけた3点目のゴール。『ガッゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、この試合最高の8をつけている。小気味良いステップから繰り出す切れ味鋭いドリブルを見ていると、どこか偉大な14番を思い起こさせる。
世紀のプレーヤーとの比較は多少持ち上げ過ぎな感はあるが、それだけ評価されて然るべきトータルフットボーラーだ。サンティアゴ・ベルナベウでの躍動を目の当たりにしたマドリーはもちろん、1年半前に獲得交渉が不成立に終わったバルセロナ、さらにはマンチェスター・シティが興味を示しているとの噂が立ち上がり、その評価額は5000万ユーロ(約80億円)を超えている。だが、メガクラブからの関心にもラインデルスは、浮ついた様子は一切見せない。
「父はいつもこう言っている。『調子に乗るな、謙虚でいろ。人を見下してはいけないし、自分が他人より優れていると思ってもいけない』。この考えは自分にとってとても大切で、本当に重要なことだと思う。大切なのは普通であること、自分らしくいることなんだ」
元サッカー選手の父の存在が素晴らしい影響を与えていることが、本人の言葉からも伺える。今のところ本人にも退団の意向はなく、2028年6月30日までの契約が更新されることが近いとの報道が伝えられている。
「契約延長について話し合っているが、それ以上のことは言えない。だけど、30代に入ってもなお、ミランでプレーする自分の姿を想像しているんだ。世界で最も素晴らしいクラブの一つであり、このクラブでプレーすることを誇りに思っている。クライフの14番を背負ってプレーすることはとても特別なんだ。自分はミランで幸せだ」。
ラインデルス自身もミランでの長期に及ぶプレーを思い描く。今のミランにとって、絶対に手放してはならない選手であることは誰の目にも疑う余地がない。
(文:佐藤徳和)
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