まだ完璧ではない。今後の課題とは?
話を本題に戻そう。いずれにしてもアモリムは非常に柔軟な采配で、今までにないチームビルディングを行っている。その結果、就任以降ほとんど戦術練習ができていない中でも、リーグ戦ではエティハド・スタジアムでのマンチェスターダービーで2-1で勝利し、アンフィールドでのリバプール戦では惜しくも勝利を逃したが2-2で引き分けた。また、FAカップ3回戦のアーセナル戦では、エミレーツ・スタジアムで、しかもディオゴ・ダロトが退場して数的不利の中、PK戦にまでもつれたものの最終的には勝利を収めている。かなり難しい試合で、勝ち点を拾えるチームを作り上げたのだ。
とはいえ完璧なチームなら5勝6敗1分なんて結果にはならない。EFLカップのトッテナム戦、リーグ戦のボーンマス、ウォルバーハンプトン、ニューカッスル戦では、4連敗を喫する地獄の時期もあった。それらの試合、特に0得点7失点だったリーグ戦での3連敗では、選手たちが新戦術へ適応するため、考えながらプレーしすぎてしまった結果、攻撃時のダイナミズムを失った。攻守で考えることが多いからか、ちょっとした集中力の欠如で失点して、状況を悪化させることもある。
ただし強豪との敵地での3戦を経て、90分の間ずっと集中してプレーすれば、強いチームであることは証明したと言えるだろう。あとは新戦術に慣れることで、集中切れを起こす時間帯を減らしていくだけだ。
またシーズン中は多くないが、戦術練習の時間が増えていけば、もう少し低い位置でのビルドアップのバリエーションも増えるはず。コンディション調整で精一杯なのか、あるいは質の低い状態で無理に繋ぐと危険と判断してあえて辞めているのか、ここ数試合ではウイングバックからの横パスでボランチに前を向いた状態でゲームメイクさせる形など、本来のアモリム戦術特有の繋ぎが失われている。
もっと手前の話をいえば、戦力も足りていない。戦力外として余らせているマーカス・ラッシュフォードを筆頭に、戦力整理と増強も必要だ。また新オーナーやCEOとともに、大物を腐らせてしまうクラブ体質も改善していくことも必須だ。
まだまだ課題は山積で、成績の不安定さは続くだろう。それでもなお、アモリムと共にマンチェスター・ユナイテッドは正しい道を歩み始めている。
(文:内藤秀明)
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