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コラム 2日前

アモリムをどう評価するべき? マンチェスター・ユナイテッドは“変われた”のか。2ヶ月で見えてきた手腕と課題【コラム】

シリーズ:コラム text by 内藤秀明 photo by Getty Images

マグワイアはなぜ復活できたのか?

マンチェスター・ユナイテッドのDFハリー・マグワイア
【写真:Getty Images】

 このような葛藤がある中で、アモリムはマグワイアを中央のCBに配置して、別の役割を与えることにした。

 3-4-3のシステムでハイプレスを受けた場合、フリーになりがちな、ウイングバックにロングフィードを通す役割を与えた。ユナイテッドに来てから披露する機会は少なかったが、マグワイアは対角に蹴るロングフィードの質が非常に高い。体格が大きいこともあってか、少ないモーションで、長い飛距離のボールを蹴ることも出来る。結果、マグワイアのフィードを、相手のハイプレスを突破する起点にすることに成功した。

 また中央に差し込む縦パスも増えた。元々、マグワイアはフリーになった瞬間にタイミングよく縦パスを差し込むプレーが苦手だ。技術ではなく、おそらく認知の問題だ。味方がフリーであることに気づくのが遅いのだ。結果、機を逸して、強引に縦パスを出しても味方が相手選手に激しく寄せられて苦しむことが多かった。

 しかし、アモリムが微調整した戦術では、この欠点が問題にならなかった。というのはポルトガル人指揮官の戦術ではそもそも、ボランチに多くターンすることを求めないため、安全第一でプレーしている。

 マグワイアが悪いタイミングで出しても、問題になりにくい。またシャドウに対してタイミング悪く縦パスを差し込むこともあるが、そもそもそのポジションにはキープ力のある選手を配置しているので、彼らの個の力で踏ん張れることが多い。万が一失っても、ボランチがもらう位置より高いので、リスクが小さい。

 結果、マグワイアが鋭い縦パスを中央に差し込んでも、大きな問題にならず、攻撃の起点になるシーンも増えた。こうしてビルドアップを任しているうちに、徐々に縦パスのタイミングを改善し始めている点も素晴らしい。

 また言わずもがな、守備の局面では、クロスボールを跳ね返すという本来得意な役割が多いため、抜群のパフォーマンスを見せることが出来る。こうしてアモリムは戦術面での微調整で、ここ数年苦しむことが多かったイングランド代表DFを復活させた。

 ただし、一応述べておくと、マグワイアの復調はアモリムの采配だけが理由ではない。オフの期間には、ブルーノ・フェルナンデスの繋がりを生かして、現役時代は知的なCBだった元ポルトガル代表DFであり、現在は同代表でコーチを務めるリカルド・カルヴァーリョに個人レッスンを受けていた。またシーズン中、スタメン落ちしても腐らずに練習を続けた。

 さらに解任されてしまったが、エリック・テン・ハフ政権下のコーチ陣が、独特な癖のあるボールの持ち方を矯正してきた過去もある。彼自身と周囲のおかげで、現代的なサッカーの中で甦ろうとしているのだ。

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