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Jリーグ 3週間前

武藤嘉紀はなぜオールラウンドな活躍ができるのか? 加速と減速を自在に操る上半身の使い方の秘訣【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

身体の重さが乗ったヘディングをするためには

 ジャンプ動作は上への方向転換になり、パワーが要求されます。耐空時間の長さと上半身のしなやかさを活かしたヘディングは、武藤のストロングポイントの一つと言えるでしょう。

 優勝を決めた2024シーズンJ1最終節の湘南ベルマーレ戦。宮代大聖のゴールに繋がった1点目のシーンは、酒井高徳の右サイドからのクロスボールに対して、テイクバックで上半身をしならせたあと、胴体部分(胸郭)の捻りや横に倒す動きをスイングに連動させることで、身体の重さが乗ったドンっと強烈なヘディングを放っています。

【動画 ヴィッセル神戸vs湘南ベルマーレ】

参照元:YouTube

 武藤は空中での姿勢も良いため、多少のコンタクトでは体勢を崩すことなくヘディングができることも強みであると言えます。

 武藤は現在、主に右サイドを主戦場としています。左サイドの選手からのクロスやセットプレーで合わせる形はもちろん、ゴールキーパーやディフェンスラインからのロングフィードに対して、ヘディングでの競り合いに強い武藤がターゲットとなってサイドに起点を作ることができるのは、戦術的にも大きな役割を果たしています。

 神戸の公式YouTubeから2024年10月に配信され話題となった、武藤の1日密着ドキュメントの映像は記憶に新しいところです。「強烈な努力」を座右の銘とする武藤が、アスリートとして日々ストイックに取り組む姿に感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。

【動画 武藤嘉紀 1日密着】

参照元:YouTube

 本コラムでは、トップレベルのサッカー選手に共通する上半身の姿勢の重要性についてたびたび言及してきましたが、それだけではなく武藤のサッカーに取り組む真摯な姿勢の両面が垣間見える内容となっています。育成年代の選手にとっても、最高の教材となるでしょう。

 順風満帆に見える武藤が、Jリーグアウォーズでした過去の不遇の時期を乗り越えた話は、とても印象深いものでした。32歳とベテランと呼ばれる域に達してきていますが、順境も逆境もしなやかに颯爽と駆け抜けていくであろう、彼の今後のキャリアにも注目しています。

(文:三浦哲哉)

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

 
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【了】
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