「腕の強さ」を最大限発揮させるために重要なこと
切り返してからのドリブルでは、ボールタッチするタイミングでギュンと再加速しています。このシーンは、前方にあるボールに左足を伸ばしてタッチしていますが、そのまま身体の前側に着地してしまうと、ブレーキの大きい動きとなってしまいます。
しかし、武藤はタッチした左脚を素早く手前に引き込んで、着地するタイミングで上半身を曲げてグッと「みぞおちの前に胸を乗せる」動きが連動することで、地面に加える力を大きくしています。
通常であればノッキングして減速しやすい局面になるため、相手選手から見ると武藤のドリブルはボールタッチ後の一歩がグイッと伸びて加速してくる感覚になっているはずです。
最後のキックフェイントは、上半身の姿勢を保持しながら、軸足の「膝を抜いて」スムーズに曲げていくことがポイントになります。身体の向きを変えながら股関節支点でグッと沈み込んでから浮き上がる、という動きでピタッと止まっています。
また、ルーズボールの奪取からドリブルを仕掛ける最初の局面では、並走しながら相手選手を左腕で押さえていますが、「腕の強さ」も武藤のストロングポイントの一つになります。
この「ハンドオフ」と呼ばれる腕でのコンタクトを強くするためには、肩甲骨や肩・肘が力んで上がらないことが重要になります。武藤は、上半身の姿勢が崩れることなく、肩甲骨を下げた状態で腕を動かせるため、腕力だけではなく脇や背中の大きな筋肉で相手を制すことが可能になります。
武藤は、球際でのボールキープやショルダーチャージでも抜群の強さを見せますが、これらの局面では上半身を固めて脚力だけでぶつかっているのではなく、姿勢と「沈むバネ」を上手く使って身体の重さをガツンと当てる動きが土台となってコンタクトの強さを生み出しています。