なぜ武藤はしなやかで力強いプレーができるのか
筋骨隆々で「ゴツい」イメージのある武藤。意外に感じるかもしれませんが、筋肉の鎧を身にまとったような重厚な上半身の内側で、骨組みである背骨や肋骨、肩甲骨の柔軟性の高さが基盤となっています。
様々な局面で上半身の姿勢を保持できることで持ち前の脚力やパワーが活き、また状況に応じてしなりや曲げ、捻る動きをうまく連動させることで、武藤特有のしなやかで力強いプレーが可能となるのです。
2024シーズンJ1第37節の柏レイソル戦。右サイドでボールを受けた武藤は、ワンタッチで前方のスペースに運んで、50m近いロングスプリントからそのまま右足で質の高いクロスを上げています。
【動画 柏レイソルvsヴィッセル神戸】
参照元:YouTube
武藤は、スッと伸びた良い姿勢で弾むように走っている印象があると思います。
ランニング動作で骨盤と連動した脚の動きを引き出すためには、腹〜腰回り、下腹部の筋群を機能させ、上半身の姿勢を保持しておく必要があります。いわゆる体幹部分の安定性であるコア・スタビリティの強さは、スピードが上がるスプリントではより重要になります。
このシーンでは、右足でボールタッチしたあと、相手選手のチャージを左腕で振り払っています。スプリントしながらのドリブルやコンタクトは、バランスを崩して減速しやすいですが、武藤は上半身の姿勢を保持できることで、スプリントで必要な脚のサイクルを崩さずに加速していきます。
また、サッカーでは単純に真っ直ぐスプリントするだけではなく、次の局面に対応するために、速く走りながら状況を判断して方向や歩幅を調整する能力も要求されます。
ボールにアプローチしていく局面では、中央の状況を確認するために首を左に振ったあと、アプローチ直前では外側に膨らんでカーブしながら脚の回転(ピッチ)を上げることで、スピードを落とすことなくクロスボールを蹴りやすい状態を作っています。これらの骨盤〜脚の動きを引き出す上でも、上半身の姿勢を保持していることは重要になります。