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Jリーグ 2週間前

興味をそそらない親善試合も多いけれど…。中村憲剛とイニエスタ、それぞれの幕引きの仕方【英国人の視点】

シリーズ:英国人の視点 text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

イニエスタと中村憲剛。2人の引退試合で際立ったのは…

 この尊敬の念はもちろん、彼がボールを扱う技術によるところが大きい。しかし、フエンテアルビージャ出身の彼が持つ人柄も大きな要因である。日本にやってくる外国人選手の中には傲慢な態度を取る者もおり、地元のファンやメディアを軽視する者もいるが、イニエスタは常にアンバサダーとしての役割を果たしてきた。ピッチ上でのパフォーマンスが衰えた時でさえ、その姿勢は変わらなかった。そしてこの試合に訪れた45,725人の観客からの歓迎に、彼自身も心を動かされたようだった。
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 試合後、スタジアムの出口に向かう途中で、彼の冷静さと落ち着きが再び垣間見えた。彼は立ち止まりながら、セルフィーやサイン、握手を求める人々に応じ、少しずつ前進していた。

 前日には、もう一人のサッカー界の善人が主役となり、中村憲剛が等々力陸上競技場でファンの声援を浴びた。

 100人以上の(元)選手がこのイベントに参加し、22,014人(公式の数字だが、おそらく中村の背番号「14」にちなんで調整された数字だと私は疑っている)の観客の前で、懐かしい思い出を呼び起こす催しが行われた。そしてイニエスタ同様、この日主役となった人物の人気の高さが際立つイベントでもあった。

 エル・クラシコは比較的真剣に(ただし予想通り遅いペースで)行われた。たとえば、マドリードのホセ・アマビスカは、コーチに止められるまで、自分がラ・リーガの上位対決に巻き込まれていると思い込んでいるかのように見えた。一方で、中村の試合はドタバタ劇のような楽しさと遊び心に満ちたものだった。スタジアム内の気温が7度ほどだったため、選手たちは熱いお茶を飲んでいたのではないかとも思う。例えば、中村自身が飲水タイム中にチームを切り替え、寛大に与えられたPKを活用したり、壁がひざまずいた状態でフリーキックを何度も試みたりする場面があったり、他の選手たちも輝く瞬間を与えられていた。

 元フロンターレのストライカーである鄭大世と大久保嘉人も、サポーターの前でゴールを祝うことができた。特に大久保のゴールは、Jリーグ最多得点記録を示す「ヨシメーター」が191から192に更新されるという形で祝われた。また、ブラジル人選手のジュニーニョやレアンドロ・ダミアンもかつての舞台に戻り、温かく迎えられた。そして、わずか数日前に等々力のベンチから鹿島アントラーズのベンチに移籍した鬼木達前監督もピッチに立つ機会を得た。

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