いま、横浜F・マリノスは覚悟を問われている
「自分は常にやり尽くしている人間。だからその瞬間のプレーに後悔はありません。新加入選手にどういうタイミングでどういう奪い方をしなければいけないのかを、僕はどちらかというとああいったプレーや行動で示さないといけないタイプなので」
ボールを奪える自信だけでなく、仮に奪えなくてもタイミングやアクションを周囲へ示す。行かなければいけない責任がある。この姿勢こそがアタッキングフットボールの真相ではないか。
完全復帰には1年半近くの年月を要した。その間、復帰と離脱を幾度となく繰り返し、右膝に厚く巻かれたテーピングが消える日はなかった。復帰後も丁寧なリカバリーとメンテナンスは欠かせず、朝早くから夕方遅くまでクラブハウスで時間を過ごしてコンディションの維持向上に努めてきた。
契約最終年の事実が本人の口から語られているように、2024年を迎えた時点で来季以降の去就は不透明だった。もし契約延長や他クラブからのオファーがなかった時、プロサッカー選手でいられなくなる不安とも戦っていたのは容易に想像できる。
限りがあるかもしれない時間のなかで、それでもアタッキングフットボールを貫いた。ピッチに立てば決して手を抜かずに走り、闘った。誤魔化しながらプレーすることもできたかもしれない。だが、それは小池龍太が歩むべき道理に反していた。
想いは託された。選手や指導者の顔ぶれが変わっても、クラブは続いていく。そして、新シーズンに向けて新たに監督と強化責任者を迎えてもアタッキングフットボール継続路線を掲げている。申し子が示した基準は、関わる者全員で受け継がなければならない。簡単ではない作業と道のりと向き合わなければいけない。
いつかピッチ上で再会する小池龍太に恥ずかしい姿を見せるわけにはいかない。いま、横浜F・マリノスは覚悟を問われている。
(取材・文:藤井雅彦)
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