フットボールチャンネル

Jリーグ 1か月前

「本気で僕を…」ヴィッセル神戸、武藤嘉紀はなぜ残留を決めたのか。“ボロボロ”の日々があったからこそ、嬉しかった【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「よっち以外に、そんな選手は見当たらない」

 3年半前を振り返れば、ヨーロッパで怪我が続いて思うような結果を残せていなかった。そうした経緯もあったからこそ、当時の三浦淳寛監督を含めて、チームをあげて歓迎してくれた神戸の熱意がうれしかった。サッカーに集中したい、という思いから単身赴任の形で神戸へ移籍し、完全復活を目指し続けた。

 加入3年目の昨シーズン。武藤はリーグ戦で全34試合に出場し、10ゴールをあげてリーグ初優勝に貢献した。そして今シーズンも、2月の開幕戦こそ欠場したものの、第2節以降はリーグ戦37試合にすべて出場。プレータイムもアタッカー陣で最長となる3088分に達したなかで、キャリアハイに並ぶチーム最多の13ゴールをあげるとともに、FW大迫勇也の「9」に次ぐ同2位の7アシストをマークして攻撃陣をけん引した。

 自身のゴールで勝利した4月の湘南ベルマーレ戦では、試合中に肋骨を骨折しながらフル出場。右サイドハーフで先発に名を連ね続けた武藤の存在感を、右サイドバックとして縦関係でコンビを組んだ元日本代表の酒井高徳は「よっち(武藤の愛称)が敵じゃなくて、つくづくよかった」とこう語る。

「点を取れるのもアシストできるのもすごいけど、なぜそんなに守れるの、というくらいに守ってくれる。あの攻守を同時にできるのは、Jリーグでは彼しかいないといっても過言ではない。しかも32歳になったシーズンに、インテンシティーを落とさずに戦い抜ける。よっち以外に、そんな選手は見当たらない」

 神戸の永井秀樹スポーツダイレクターは、武藤の交渉を問う質問に「クラブとしては最大級の評価をしているし、来シーズンも絶対的に必要な選手です」と答えていた。そして、周囲を大喜びさせた契約更新の発表後に、神戸の三木谷浩史会長は自身のX(旧ツイッター)を更新。1枚の写真をポストした。

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!