ラッシュフォードは新時代に振り落とされた
そんな中、2024年夏、筆者としても個人的に「どうしようもない」という烙印を張りつつあったラッシュフォードに変化が訪れた。コーチ陣の変化のおかげなのか、何なのか、理由はわからないが明らかに攻守でハードワークする場面が増えたのだ。細かく言えば粗も沢山残る。ただようやく訪れた10番の成長の兆しに大喜びした。
しかし、その兆候は長続きしなかった。ルベン・アモリムが到来して少し経った頃には、その明るい兆しも失われ、露骨に走らない場面が増えていた。もちろん新監督のエッセンスであるオフザボールの動きや、ワンタッチプレーが増えている。ただ今季序盤にわずかに感じた必死なプレーはもうない。そしてとうとう、マンチェスター・ダービーではベンチ外に追いやられた。当然の結果だ。
そんな猛省するべきタイミングで、「個人的には、新しい挑戦と次のステップに備える準備ができていると思う」と移籍を示唆したのだ。
筆者としては、試合後の段階では、ダービーで勝った感情は嬉しさだけでなかった。わずかながらではあるものの、新時代の到来によって歴史の一部が手のひらから溢れる喪失感と、10番抜きで勝利したことを喜ぶことに対して罪悪感を覚えていた。
ただ冒頭のコメントでそんな感情も霧散した。もう彼を批判することに躊躇はない。はっきりと言おう。ラッシュフォードに準備ができたのではない、彼は新時代に振り落とされただけだ。
何故、このタイミングでこんなコメントを残したのか。いやこうなってくると、むしろこのタイミングで、記者の前でこのコメントを出来る不用心さが彼の本質なのか。そんな無神経さを持つからこそ、自分でボールロストして味方が困っていても、平気でいられるのかもしれない。