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今や100人を超える日本人選手が日本を離れ、異国の地で自らの実力を証明しようとしている。ただ、トップリーグで成功し、日本代表でも活躍し続けるのは一握りで、多くは遅かれ早かれ帰国という選択肢を選ぶ。その1人である武藤嘉紀を例に、帰国した者たちが与える影響について考えてみたい。(取材・文:ショーン・キャロル)
著者プロフィール:ショーン・キャロル
1985年イングランド生まれ。2009年に来日。『ニッポンとサッカー 英国人記者の取材録』『英国人から見た日本サッカー “摩訶不思議”ニッポンの蹴球文化』の筆者。「Jリーグ Monthly」のレギュラー出演。高校サッカー、Jリーグ、日本代表など幅広く取材している。過去にはスカパーやNHK、J SportsなどのJリーグ番組出演も。
MVPに輝いた武藤嘉紀
サッカー選手もまた人間であり、他の人々と同じように苦悩を抱えているという事実を、私たちは時々――いや、しばしば――忘れてしまう。
選手たちはもちろん、多くの人が夢見る仕事をしながら(少なくとも最高レベルでは)十分な報酬を得るという非常に恵まれた立場にある。しかし、それは人生の困難が彼らに影響を与えないことを意味するわけではない。
この事実を痛感したのが、武藤嘉紀が2024年のJリーグMVPを受賞したときだった。32歳の武藤は、その輝かしい瞬間にこれまでのキャリアで最も困難だった時期を次のように振り返る。
「僕は一見、華やかな経歴に見えますが、多くのケガ、挫折、紆余曲折を経て、今があると思っています。ヨーロッパでは、1年間以上ベンチに入ることができず、家を出るときのドアが非常に重く、そして帰り道には泣きながら、『Mrs. GREEN APPLE』さんの『僕のこと』を大熱唱して、運転したことを今でも鮮明に覚えています。しかし、そういった苦しい経験、逃げ出したくなるような経験が、僕を人としても、サッカー選手としても強くしてくれたと、今では感じられます」