ヴィッセル神戸が直面したチームの危機
「勝ち点を取りこぼす試合も多かったけど、それでも全員で少しずつ勝利を積み重ねてここまできた。うれしい時期も悔しい時期もたくさんあったシーズンでしたけど、最後に優勝できたのは本当にうれしい」
目の前の一戦にすべてをかけて戦ってきたがゆえに、今シーズンのターニングポイントは選べないと扇原は思わず苦笑する。しいてあげるとすれば8月下旬となるだろう。キャプテンのMF山口蛍が練習中に負傷。左膝外側半月板と左大腿骨外顆軟骨の損傷で手術を受け、全治まで最大3カ月と診断された時期だ。
不動のインサイドハーフだけでなく、神戸の精神的な支柱を担ってきた山口の長期離脱。チームの危機に山口は必ずシーズン中に復帰する、そのときには優勝争いをしていようと檄を飛ばしたのが扇原だった。
「蛍くん(山口)は替えがきかない選手ですし、途中で離脱したのは本当に大きかったけど、チーム全員でカバーし合いながら蛍くんの穴を埋めてきた。蛍くんがシーズン中に復帰する、というのはみんなが信じていたので、復帰するタイミングでこうして優勝争いをして、また一緒に優勝できたのもうれしいですね」
言葉通りに山口は11月10日の東京ヴェルディ戦で復帰。湘南戦でも87分からMF井手口陽介に代わってホームのノエビアスタジアム神戸のピッチに立ち、直後の接触プレーで流血し、頭に包帯を巻いた状態でプレーを続け、優勝が決まった瞬間の喜びを、扇原をはじめとする仲間たちと共有できた。