「チームのため」と「ストライカーのエゴ」その狭間で出した答え
「中山雅史さんの話をしてくれたんですよ。ゴンさんもジュビロ磐田でキャプテンだったけど、パスをすべてよこせ、といった感じだったと。それまではチームを最優先させるべきか、もっとエゴを出すべきかで悩みましたけど、フォワードはやはりゴールだと思えて。チームを任せられる選手は大勢いたし、無理をしてチームを第一に考えるのはもうやめよう、ゴールを決めればそれがチームのためになると整理できてからですね」
その後の19試合で19ゴールを量産した軌跡のクライマックスは、12月2日の大宮アルディージャとの最終節。開始1分に先制した川崎は、小林がさらに3ゴールを連発して勝利を確定させた。
現時点でも唯一のハットトリックを達成し、味方がもう1点を加えて試合を終えた直後に奇跡の一報が届いた。キックオフ前で首位だった鹿島が磐田とまさかのドローに終わった結果、勝ち点で並び、得失点差で大きく上回った川崎がリーグ戦を制し、悲願の初タイトルを手にした瞬間だった。
「大差がついた終盤にベンチを見ると、みんなが0対0だと伝えていて、このまま終わってくれと。あのシーズンだけじゃなくて、怪我でつらかった時期を含めて、それまでのすべてが本当に間違っていなかった、報われたと思えて。たくさん苦労したけど、本当に忘れられないすごく幸せな瞬間でした」
人事を尽くして天命をえた直後。ランキング1位だったFW杉本健勇をも逆転し、得点王のタイトルも手にした小林は個人的な喜びも忘れて、ホームのピッチ上で無我夢中になって誰かを探しはじめた。