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Jリーグ 2週間前

「お前には岡山でJ1へ昇格してほしい」ファジアーノ岡山、木村太哉が胸に刻み続けてきた先輩たちの思い「ようやく」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「お前にはファジアーノ岡山でJ1へ昇格してほしい」

 3シーズン目を迎えた木山隆之監督のもとで、昨シーズンまでのサイドアタッカーからシャドーへコンバートされたのも、前後左右のハードワークをさらに広範囲で展開できる点でプラスにはたらいた。

「パスをつなぐとか、技術が求められる場面では他のうまい選手たちがいる。僕に求められるのはハードワークであり、それを他の選手よりもうまく表現できる自信もある。その意味で、守備でも攻撃でも相手を混乱させられるようなプレーができればとずっと思ってきたし、それこそが岡山のよさだと思っています」

 いつしか岡山のスタイルの体現者となった木村の脳裏には、いまもある言葉が刻まれている。それはJ1へ昇格させようと岡山の一員になるも、志半ばで去っていった先輩たちの願いでもあった。

「お前にはファジアーノ岡山でJ1へ昇格してほしい、と何度も言われてきました。このクラブに関わってきたすべての方々の思いを背負って今日は戦えました。僕だけの力で勝ち取ったわけではないけど、この歴史的瞬間に立ち会えたのを本当に誇りに思いますし、今度はJ1の舞台でチーム一丸となって勝っていくためにも、自分が身を粉にして奮闘して、勝利に徹するプレーを表現していきたい」

 61分にはカウンターから、MF本山遙が決定的な追加点をゲット。悲願成就まであとわずかに迫ったアディショナルタイム91分に、足がつった木村はお役御免でベンチへ下がった。精も根も尽き果てた状態で、2-0の勝利とJ1昇格決定を告げる主審のホイッスルを聞いた。自然と涙は出なかった。

「いやぁ、涙が出るかなと思っていたけど、なぜか出なかったですね。実感がなかったというよりは、あまりにもうれしい気持ちが爆発しすぎて、泣くというよりは喜び一色に染まっていた、という感じでした。小さなころからずっと夢見てきたJ1の舞台で戦える。ようやくスタートラインに立てます」

 今シーズンに清水エスパルスから加入し、キャプテンを務める33歳のMF竹内涼は、新天地の岡山を「16年間のプロ生活で見てきたなかで、間違いなく一番真面目なチーム」と位置づける。東を兵庫、西を広島に挟まれた“J1空白県”の歴史に、3度目のプレーオフ挑戦でついにピリオドを打った愚直なハードワーク軍団の中心に、歴史的な一戦で記録したアシストという勲章を引っさげた攻守のダイナモ・木村がいる。

(取材・文:藤江直人)
 
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