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Jリーグ 2か月前

サンフレッチェ広島に何が起きていた? スタイルを貫き、姿を現した歪み。優勝争い佳境で3連敗の原因【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

苦しむ未来? それでもサンフレッチェ広島は「男前なチーム」

サンフレッチェ広島

【写真:Getty Images】

 マルコ・トゥーリオ、ラファエル・エリアス、原大智で構成された3トップの破壊力はJ屈指であり、デュエルで負けないを基本ルールとしている広島の3バックにとって、原則を裏返されるような試合となってしまった。3バックがベストコンディションならばとどうなるか見てみたいことも事実だが、コンディションを維持できるような状況でもないこともまた事実である。

 試合を通じてお互いが影響や新たな選択肢を与えていることは間違いない。相手の戦術が良ければ部分的に採用することだってあるだろう。もしかしたら、新しい視野を手に入れることで、自分たちのサッカーを進化させられるかもしれない。上位3チームのサッカーによって、他のチームが変化するきっかけになり、上位3チームが苦しめられるかもしれない未来はそこまで来ている。

 一方でだからといって、広島が変化する必要があるかといえば微妙なところだろう。

 今回の記事は3連敗した理由を探りながら広島がどのように変化していくかが裏テーマであった。しかし、3連敗の試合を見ても、広島は広島であった。自分たちのやるべきことを貫き、相手よりもシュートを打ちまくって負ける男前なチームだった。

 その姿勢を貫き続けたことで、ホーム最終戦の北海道コンサドーレ札幌戦で勝ち、青山敏弘のセレモニーを最高の形で行うストーリーからの最終戦に繋ぐことができている。神戸の試合結果次第であるかもしれないが、3連敗の試合がそうであったように、最終戦も広島はいつもどおりに相手のゴールに殺到する試合を見せてくれるのではないだろうか。

 昨シーズンまでは攻撃のデータの良さのわりに、得点が少なかった広島。大橋祐紀というストライカーを手に入れて問題の解決になったかと思いきや、海外に旅立ってしまった。アルスラン、新井の固め打ちがなければ、ゴールスコアラーの数字としては少し物足りない加藤以外はどこにいった? という状況になっている。誰かの覚醒を期待するか、新しい選手を獲得するかは来年の楽しみにしておきたい。一方で3バックの交代要員は早急に必要になるだろう。

 かつての森崎和幸がわざとミスパスをすることで、攻撃のテンポを遅らせていたと伝説になったように、広島にとってセントラルハーフの役割をどのように考えるかは非常に悩ましいところである。松本、川辺コンビはお互いに前線に飛び出すことを得意としている。役割を交換できると言えばそのとおりだが、後方に残ることでゲームをコントロールすることを本職とする選手が少しはいてもいいかもしれない。ただし、その選手の存在が広島らしさを薄めることになることを嫌っているのだろう。来季のスキッベ監督の調整が今から楽しみである。

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