Jリーグではロングボールが重要に。では世界はどうなっている?
話を優勝争いに戻すと、優勝を争っているチームは神戸と町田だ。どちらかと言えば、神戸はボールを持つこともできるけれど、基本的にはロングボール中心、町田はボールを持つことにチャレンジもしたけれど、ロングボール中心と、ロングボールがJリーグを制覇するために重要になってきている。
広島も言うまでもなく、空中戦や裏へのロングボールが多いチームだ。ウイングバックとシャドウの反する動きによって、相手の裏を狙う攻撃は広島の十八番になっている。
欧州に目を移すと、近年のサッカーはショートパスによるビルドアップが主流となっている一方で、マンマーク戦術が流行になりつつある。サッカーの原則である「すべての局面が同数なら最前線で勝負!」にしたがえば、自然とロングボールが増える流れになるだろう。ロングボールをマイボールにできる選手(アーリング・ハーランドやモハメド・サラー)やロングカウンターを完結できる選手(ヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴ)の価値が高まりつつあることは論理的な流れとなっている。
日本の流れが世界の流れと一致しているかは疑問でいっぱいだが、広島の守備も相手にロングボールを誘うような節がある。広島の3バックはロングボール対抗戦に自信があるからだろう。開幕戦で浦和レッズのチアゴ・サンタナを完封したことは、今季の広島のスタイルを改めて再確認させる意味でのよいプレゼンテーションとなっていたし、町田との直接対決ではその強さを知らしめるものだった。
一方で町田の存在も、各クラブにおいてロングボール戦術を再認識させるきっかけとなった。ボールを後ろで回しているよりもどんどん前線にボールを送り、攻撃の試行回数を増やし、高さの優位性から相手を崩していくサッカーから始まるセットプレーの連続は驚異的であった。オ・セフン。ミッチェル・デューク、ときどき望月ヘンリー海輝とロングボールの目的地を変更する工夫を見ることができた。神戸は大迫勇也を基本ターゲットとしつつ武藤嘉紀も空中戦の的に加わりながら、競る場所とセカンドボールを拾う枚数を揃えようと計画されていた。
このような工夫の広がりが、ロングボールに強いはずの広島の3バックを苦しめたことは言うまでもなく、オチは京都サンガF.C.であった。