大橋祐紀の移籍で顕在化した「問題」。攻撃における光と影
ただし、決定打にかけるというのが現状だろうか。広島の終盤の攻撃はスクランブルアタックの様相が強い。ウイングバックからウイングバックへの攻撃に再現性はあるが、その他のプレーについては、意図が悪い意味で重なり合ってしまうことがある。例えば、ポケットに同時に2人の選手が突撃したり、クロスに対してファーサイドに殺到してニアに誰もいなかったりという場面だ。
さらに広島のプレッシングは強烈さが1列目の選手に求められている。強烈さを表現できる選手は限られており、大橋祐紀の離脱はこの問題を顕在化させることとなった。新戦力のトルガイ・アルスランやゴンサロ・パシエンシアがプレッシング面に不安を残すことは今後も課題になっていきそうな予感がする。
相手からすれば1列目のプレッシングが最初の乗り越える壁であり、その乗り越えるコストが少なければ少ないほど、パワーを持って広島の3バックに挑むことができる構図になっている。全体の疲労と走りまくれる選手の不在を解決するための夏の補強となったが、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)時代のウイングバックのように、個の質で凌駕することが必ずしも求められている采配ではないのに、結果として求められることになっても結果は続かないだろう。
6人目の攻撃を志向する広島の攻撃は良さもあれば悪さもある。アルスランがプレーエリアを広げても、空いたエリアに6人目が登場すればバランスの維持が可能となる。先入観で言えば、FW気質の加藤陸次樹もプレーエリアを広くすることを許可されたことで、サイドに流れてのプレーのクオリティを上げることにも成功している。
一方でいるべき場所に誰もいなかったり、プレーエリアを悪い意味で重なってしまうシーンも見られた。ただし、これらを整備してしまえば、加藤や大橋のブレイクには繋がらなかっただろうことも事実だろう。選手の個性や組み合わせを状況によって使い分けることで解決したいが、満田の奮起にも期待したい。