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Jリーグ 2か月前

「エースだよ」サンフレッチェ広島、加藤陸次樹を蘇らせた青山敏弘の声。あの“トラウマ”からの解放「幸せ者ですよ」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

前節・浦和レッズ戦でのトラウマ「僕の責任」

「ボールを一度流してファーへ膨らんだときに、キーパーの重心が僕の方へ傾くのが見えました。シュートのコースはそれほどよくなかったけど、重心がずれた結果として、僕が蹴ったシュートの方向が逆をついた。時間があったなかでボールを見つつも、キーパーの動きもしっかりと見られた結果ですね」

 右足のインサイドキックで丁寧に放たれたシュートが対角線上を切り裂き、ファーサイドのゴール左隅へ鮮やかに吸い込まれていく。体勢を必死に立て直してダイブした菅野孝憲だったが、加藤が膨らんだ方向へ重心をかけた分だけ反応が遅れ、懸命に伸ばした右手のわずか先をボールが通過していった。

 浦和レッズとの前節で心に刻まれたトラウマを、加藤は自らの努力で乗り越えた。

 敵地・埼玉スタジアム2002に乗り込んだ11月10日の一戦。2点のビハインドを背負った65分にMF松本泰志のスルーパスに反応し、ファーストタッチでボールをDFマリウス・ホイブラーテンの前方へ運んで一気に抜け出した加藤が、浦和の守護神・西川周作と1対1の状況を迎えた直後だった。

 右足から放たれたシュートは左ポストの外側をかすめた。その場に仰向けで倒れ、両手で顔を覆った加藤は、最終的に0-3で敗れた試合後に「今日の負けは僕の責任です」と声を絞り出した。

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