まさかのPK失敗。そのとき武藤は何を思っていたのか
ビハインドを背負ったまま時間が経過し、ついに88分を回った直後に武藤をアクシデントが襲った。キャプテンのMF山口蛍が放ったロングボールを、ペナルティーエリア内の右側で競り合った際に柏のDFジエゴの左ひじが顔面を直撃。激しく出血した右の唇あたりは、止血後も赤く腫れていた。
歯を食いしばって立ち上がった直後に状況が一変する。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)と交信していた御厨貴文主審が、OFR(オンフィールド・レビュー)を実施するジェスチャーを示した。武藤に対するジエゴのプレーが、PKの対象になるかどうかを映像越しに判断するためだった。
そして、約2分後に判定がPKへと変更され、前半にもひじ打ちでイエローカードをもらっていたジエゴは、2枚目のイエローカードをもらって退場になった。同点を確信した武藤は、ユニフォームの右肩部分を血染めにした状態でうずくまり、ピッチを何度も拳で叩きながら喜びを爆発させた。
キッカーはもちろん大黒柱のFW大迫勇也。しかし、柏の選手交代などで時間を要し、時計の針が95分を回った直後にまさかの光景が生まれた。ゴール右を狙った大迫のPKが、ゴールの枠を大きく外れてしまう。蹴った瞬間に失敗とわかるキックに、昨シーズンの得点王&MVPはピッチに突っ伏して悔しがった。
このとき、アディショナルタイムがどのくらいあるのかがスタジアム内にも、試合を配信しているDAZNにも表示されていなかった。武藤も「正直、時間もよくわからなかった」とこう続ける。
「このまま試合が終わってしまうんじゃないか、という怖さもあったけど、サコくん(大迫)はいままで何度もチームを救ってくれたし、みんなも彼の気持ちを汲んで、何とか1点を、という気持ちになった」