デクラン・ライスの役割を変えたことによる劇的な変化
その代表例が、先制点が決まった7分のシーンで、ライスは最初の立ち位置からかなり右サイドに寄ってパス回しに参加している。
イングランド代表MFのポジション移動によって5人でボールを回すアーセナルに対して、対応できなかったスポルティングCPは4人で監視しなければいけないミスマッチが発生。最終的に誰もマークすることができていなかったライスのところからズレが生まれて、相手守備陣は完全に後手に回った。
この場面はスローインの流れということもあって、ライスが右サイドに顔を出しやすい状況にあったのは確かだろう。ただ、彼がウーデゴールらとのポジションチェンジに参加したのはこのシーンだけでなく、直後の12分にもノルウェー代表MFが下がって受けたところで右サイドに流れ、最終的にはサカからのボールを右のハーフスペースを駆け上がってボールを呼び込んだ。
この一連のムーブに対して、スポルティングCPの守備陣は後手を踏み続けた。22分の得点シーンも最終的にはトーマス・パーティーとサカの質から生まれたが、この場面の起点となったのが彼の右サイドへのボールキャリーだった。
最初のアプローチがハマったことで、2点をリードしたアーセナルは、前半終了間際に得意のコーナーキックからダメ押しの3点目をゲット。これで勝負は決まった。
恐らくライスの劇的な役割の変化は、代表ウィーク期間中に落とし込んだものだろう。これから訪れる怒涛の過密日程で勝ち進むための重要なアプローチとなりそうだ。
(文:安洋一郎)