「かつて見ていたヴィッセル神戸と違うのも感慨深い」
もっとも50分で交代した関係で、歓喜の瞬間をピッチ上で味わっていない。対照的に今回は右タッチライン際でボールをキープしながら強引に前へ運び、ガンバのDF半田陸のファウルで転がされた数秒後に、優勝を決める笛が鳴り響いた。最後まで体を張った姿を、当然のプレーだと佐々木は言う。
「ヨッチくん(武藤)を含めて、最初から出ている選手たちが体を張っていたなかで、途中から出た自分が30分くらいでバテているようじゃダメなので。僕が途中から入る、というのはそこ(体を張る)にもひとつの考えがあったはずだし、その意味でも僕にとっては基準のプレーだと思っています」
コメントの端々からも、吉田監督が勝因にあげた理由が伝わってくる。アンドレス・イニエスタを擁した神戸は、2019年度の天皇杯で悲願の初タイトルを獲得した。決勝まで一度もベンチ入りを果たせず、国立競技場のスタンド上段で応援していた自分を引き合いに出しながら、2度目の戴冠を佐々木はこう語る。
「今回の優勝は100パーセント、心の底から喜べています。アカデミーから育ててもらっている僕としては、かつて見ていたヴィッセル神戸と違うのも感慨深いですね。クラブとして上位に食い込むのも難しかった時期があったなかで、昨シーズンにリーグ戦のタイトルを取っただけに終わらず、今シーズンも天皇杯を加えて、さらにリーグ戦でも首位に立っている。クラブとしてすごく前進していると感じています」
昨シーズンから遂げた神戸の前進に、リーグ戦で33試合、1641分間プレーし、大迫、武藤、宮代に続く5ゴールをマークし、特に心の部分で成長を遂げている佐々木の影響は大きい。「それでも」と本人は言う。
「そこ(成長)に関しては少なからず感じていますけど、一方でまだまだ結果を残せていない、とも感じています。もっと僕が結果を残すことで、もっともっとチーム力は上がると思っているので」
残り2試合となったJ1リーグで、神戸は2位のサンフレッチェ広島に勝ち点3ポイント差をつけて首位に立っている。敵地に乗り込む30日の柏レイソル戦に勝てば、翌12月1日に北海道コンサドーレ札幌戦を控える2位の広島が引き分け以下に終わった瞬間に、延べ8チーム目のJ1連覇が決まる。
先発でも、流れを変える切り札でも。そして、左右のウイングに加えて1トップでも、その後方のインサイドハーフでも。攻撃的なすべてのポジションで、吉田監督およびチームに攻守両面で求められる役割に、100パーセント以上のプレーで応えてみせる。二冠に挑む神戸を、佐々木が放つ存在感が力強く支えている。
(取材・文:藤江直人)
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