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Jリーグ 6日前

太田岳志は人の“心を動かす”。京都サンガF.C.で試合に出続ける理由とその分岐点。「何があっても驚かない」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「これまでほとんど負けていたんですよ」

「どのカテゴリーにおいてもチャンスをもらえていないだけで、いざ試合に出れば結果を出せる選手はたくさんいると思うんですね。確かにつらいことの方がはるかに多いけれども、いざチャンスが巡ってきたときに結果を出せるかどうかは、それまでのトレーニングでいかに頑張ってきたかに尽きると思っているので」

 12シーズン目を迎えている自らのプロサッカー人生を振り返れば、どんな状況におかれても決して腐らず、愚直に努力を積み重ねてきた自負がある。だからこそ、太田は現状をこう受け止めている。

「こうして自分が先発で出て、結果を出せて、それが他チームのゴールキーパーの励みになるのであれば、僕にとってもすごくうれしいこと。キーパーというポジションは本当に残酷ですけれども、1人しか先発できない分だけ、試合に出て勝ったときの喜びは人一倍なので、その喜びのために頑張ってきたと思っています」

 広島戦で曺監督を泣かせ、鹿島戦では敗戦から救った2度のビッグセーブも「とっさに右腕が出た、というのが本音ですね」と苦笑いを浮かべながら、偶然ではなく必然に導かれたものだと強調している。

「あのようにとっさに右手が出たのも、日々の練習でシュートに対応していたからこそだし、練習でやったことは嘘をつかないし、練習でできないことは試合でもできない、というのはその通りだと思います」

 もっとも、鹿島戦には一抹の不安があった。生まれ育った三重県在住の両親がスタンドで見守るなかで、太田は「特に父が見に来た試合は、これまでほとんど負けていたんですよ」と打ち明ける。

「前に父が観に来たのは富山にいたときですけど……今日は勝ちたかったけど、負けなくてよかったです」

 親思いの優しい一面ものぞかせた太田は、試合前もハーフタイムも、そして試合後もクとは特別な会話をかわしていない。たったひとつのポジションを争うライバルにして、試合へ向けてお互いを盛り上げていく大切な仲間へ、太田は「言葉はなくてもわかりあえているので」と屈託なく笑う。

 残り2試合。すでにJ1残留を決め、4戦連続無敗を継続している京都を最後尾から、太田はクとの共同作業で力強く支えていく。

(取材・文:藤江直人)

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