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Jリーグ 3日前

サンフレッチェ広島、中野就斗はさらに強くなる。繰り返した「もう一回」の言葉。忘れられぬ試練を「乗り越えてこそ」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

中野就斗の動きを見た松尾佑介の“賭け”

「普通にボールの処理を誤ってしまった。主審が笛を吹かない以上はプレーオンですし、あの場面は僕のミスというか個人的な問題でした。正直、クリアするのか、味方へつなぐのかで考えているうちにボールが前に来ていて、ちょっと遅れてしまった。大事な試合だからこそ、はっきりできればよかった」

 荒木だけではない。ベンチのミヒャエル・スキッベ監督らが、いっせいにハンドをアピールした状況に気を取られたわけではないと前置きした中野は、伸ばした右足でボールに触れず、後方へそらしてしまった責任を自分自身に帰結させた。ただ、失点にはもうひとつの要因も加わっていた。

 閃きに導かれるように、走り込むコースを中野の右斜め後方から背後へ変えた松尾が打ち明ける。

「彼(中野)が途中で走るコースを変えたので、何となくあっち(後方)に来るんじゃないかと。ピッチもちょっとスリッピーだったし、彼の体の向きもあった。勘というか、賭けみたいなものでした」

 中野のミスを介して、目の前にこぼれてきたボールを松尾が確実にゴール左へ叩き込んだ。中野が走るコースを変えたのは、先にボールの落下点に入った刹那で「クリアするのか、つなぐのか」でほんの一瞬ながら迷っていた隙と一致する。失点した直後に頭を抱えた中野は、その後の心境をこう明かしている。

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