「点を取ってくれなくて、サンキューな」
山岸が3度目の怪我を負った、サンフレッチェ広島とのルヴァンカップ準々決勝第1戦で名古屋は0-1で敗れている。しかし、第2戦を2-1で制し、2戦合計2-2で突入したPK戦を今シーズン限りでの退団を表明しているランゲラックの大活躍で制し、準決勝進出を果たしたことも山岸の背中を押した。
迎えた横浜F・マリノスとの準決勝。ともに途中出場した山岸は連続ゴールをマークし、2戦合計4-3でマリノスをくだした原動力になった。大活躍を演じるまでの過程を、山岸はこう振り返る。
「終わりよければすべてよしだと、チームを助けるゴールを決めてヒーローになるんだと、常にポジティブなイメージを抱きながらリハビリに取り組んできました。弱い自分に打ちかっていくためには頭の変換がすごく大事だと思ってきたし、毎日のように自分自身との戦いを繰り広げてきた感じですね」
ルヴァンカップ準決勝の前にもうひとつ、照準を定めていた一戦があった。古巣・福岡のホーム、ベスト電器スタジアムに乗り込んだ10月4日のJ1リーグ第33節。青写真通りに先発復帰を果たすも無得点に終わり、チームも0-1で敗れた試合後に、福岡の長谷部茂利監督のもとへ駆け寄って握手した。
「点を取ってくれなくて、サンキューな」
いまも畏敬の念を抱く長谷部監督の言葉に、その瞬間は「イラっとした」と苦笑した山岸が続ける。