土壇場で変更されたPKの順番
アビスパ福岡が浦和レッズを破り、クラブ史上初のタイトルを獲得した昨年11月のルヴァンカップ決勝。福岡の一員として先発した山岸は、2-0とリードして迎えた54分に獲得したPKのキッカーを任された。しかし、ゴールの左隅を狙ったコースを浦和の守護神、西川周作に読まれ、完璧にキャッチされていた。
試合は浦和の反撃を1点に抑えた福岡が逃げ切った。しかし、テレビ観戦していた長谷川監督は、山岸がPKを苦手としている、という印象を抱いた。あれから1年。名古屋へ完全移籍した山岸は2年連続で決勝の大舞台に立ち、7番手でキッカーが回ってくるかもしれない場面に備えて気持ちを集中させた。
しかし、PK戦へ向けて円陣を組み、士気を高める直前になって状況が一変した。
「祐也、5番目でいけるか」
長谷川監督の突然の問いかけに、75分から途中出場していた山岸も一瞬の間を置いて叫んだ。
「いきます!」
足に不安を抱えたまま、延長戦を含めた120分間をフルに戦っていた河面の状態を勘案した長谷川監督が、土壇場で山岸を繰り上げる決断をくだした。間が置かれたのは、驚いたからか。それでも山岸は「自分を信用してくれたんだと、勝手に思い込んでいました」と大役を任された瞬間の心境を明かした。
「5番手のキッカーが決めたら優勝、という形で回ってくれば、…自分はやはり持っているのかな、と」