試合の流れを変えたスロット監督の修正
【写真:Getty Images】
最初に行った修正が、トレント・アレクサンダー=アーノルドのボールを受ける位置の変更である。前半は右サイドに張ったままだったイングランド代表DFは、後半になるとボランチの位置へと積極的に顔を出して、最終ラインの選手たちからのパスの選択肢を増やした。
この変更によってリバプールのポゼッションは劇的に安定する。前半の支配率は48%に留まっていたが、59分に試合の画面に表示された後半開始14分間の支配率は72%まで向上していた。
後半開始直後から自分たちでペースを握ることに成功すると、指揮官は66分という早い時間帯でカーティス・ジョーンズとルイス・ディアスをマック・アリスターとドミニク・ソボスライと代わって投入。ディアスをトップ下で起用する、これまでの試合では見られなかった攻撃的な采配をみせ、ピッチ上の選手たちに勝負の時間帯であることを伝えた。
すると、70分にコーディ・ガクポ、72分にモハメド・サラーにゴールが生まれてあっという間に逆転に成功。中でも72分の得点は、自陣ボックス内でボールを回収したジョーンズとトップ下に入ったディアスがカウンターの局面でボールを運んだことが起点となっており、指揮官の交代策がしっかりとハマった。
77分には、普段とは違う中盤の構成だったことから遠藤航をヌニェスに代えて投入し、攻撃的な布陣からいつも通りの形へと再変更。試合をクローズする役割を与えられた日本代表MFは、状況によって最終ラインに吸収される形でクロスを跳ね返すなど自らの役割を実行した。
一方のブライトンは監督を含めて若さが出てしまった。リバプールにボールを握られたことで、動かされた選手たちの疲労が色濃くなったが、ヒュルツェラー監督は76分まで選手交代に踏み切ることができなかった。
疲労が色濃くなったことで、前半は効果的だった変則的なビルドアップも雑になり、スロット監督の修正を前に手も足も出ない形に。両指揮官の“修正力の差“がスコアに出る形となったと言っても良いだろう。
冒頭に述べたように、この勝利でリバプールはプレミアリーグで単独首位に躍り出た。レギュラーCBのイブラヒマ・コナテが前半のみで負傷交代するなど、全ての物事が順調に進んでいるわけではないが、アンフィールドでのユルゲン・クロップ体制を彷彿とさせる逆転勝利は間違いなくチームに勢いをもたらすはずだ。
(文:安洋一郎)