「ブラボー! お前はボランチの選手だ!」
J3のテゲバジャーロ宮崎とのトレーニングマッチ。前後半の90分間を終え、エキストラとなる30分間の3本目に入る直前にかけられた、当時のランコ・ポポヴィッチ監督の指示が知念の運命を変えた。
「ボランチの選手がいなくなったので、3本目で一度やってみてくれ」
佐野海舟(現1.FSVマインツ05)がアジアカップを戦う森保ジャパンに招集されて不在で、さらにキャプテンに指名されたばかりの柴崎岳が宮崎戦の前半途中で負傷退場した。ボランチの絶対数が足りなくなった状況での応急的な措置だと受け止め、勝手もわからないなかで、無我夢中で30分間プレーした直後だった。
「ブラボー! お前はボランチの選手だ!」
再び響きわたったポポヴィッチ監督の大声とともに、最前線から中盤の底への異例ともいえるコンバートを正式に告げられた。その瞬間の心境を「びっくりしたし、何だか複雑でした」と語った知念は、キャンプからプレシーズンマッチをボランチでプレーし、開幕が近づいてきたころにはこんな言葉を残している。
「いまは普通にうれしいですね。意外とボランチとしてやれているのかな、と。ぶっちゃけ、プレーしていて楽しさを感じているのはボランチの方ですね。正直、フォワードにずっとこだわりがあったわけでもないし、フォワードではどのようにプレーしていたかな、と思っちゃうくらいなので。いまはボランチとして覚えるべきプレーが本当に多くて、何だか子どものころを思い出している感じです」