まさかの主将が退場…。「意識した」こととは?
「たとえゴールが認められていても、個人的には慌てる必要はないと思っている。サッカーでは失点する状況は絶対にあるし、失点しても味方が得点しても、自分がやるべきプレーは変わらないので」
沖がやるべきことのひとつに「声」がある。清水からは7000人近いファン・サポーターが駆けつけ、負ければJ3へ降格する可能性があった栃木も大勢のファン・サポーターが勝利を後押ししている。ただでさえ声が通りづらく、いつも以上に振り絞らなければいけない状況が、83分を境にさらに一変した。
相手の背後からのファウルに激高した、キャプテンのFW北川航也が報復行為に出て、まさかの一発退場を命じられる。清水は50分に右CKのこぼれ球をDF住吉ジェラニレショーンがねじ込んでおり、両チームともに無得点の均衡を破った先制点を守り抜くしかない。沖が出す声のボリュームもおのずとあがった。
「フィールドプレーヤーがその分、プレスのかけどころでうまく対応しなきゃいけなかったし、きつくなってくるなかでラインがずるずると下がらないように、という点を意識して声を出したつもりです。
ただ、こうした状況はシーズン通して絶対にあるし、みんなも特に慌てずに取り組めていた。10人だからとか、人数少ないからといったマインドをもたずに、自信をもってプレーできたのはよかったと思う」
もっとも、アディショナルタイムの93分に肝を冷やす場面が訪れた。栃木のロングボールに対して、前へ出てきた沖が余裕をもってキャッチできる体勢に入った。しかし、ただでさえかすれている沖の声が敵味方の大歓声にさらにかき消され、クリアしようとさがってきた住吉の耳には届かなかった。