内田篤人は「本当にありがたいコーチ」

　セットプレーの守備における韓国の情報は、内田コーチから伝授されていた。そのうえで、日本は相手ゴール前へ入っていく選手たちの顔ぶれを変えた。試合後の公式会見。佐々木監督代行がうなった。

「相手をブロックしてニアの選手をフリーにしていたところへ、長谷川選手が非常にいいクロスを入れました。ただ、まさか北川選手があそこに入ってくるとは、私も知りませんでした」

　長谷川とのアイコンタクトをとっさに成立させた北川も、セットプレーのときに韓国ゴール前へ入っていくひとりに指名してくれた内田コーチに感謝しながら、こんな言葉を紡いでいる。

「代表ではコーナーのときに中へ入り、相手と競っていく状況があまりなかったなかで、今回はそのチャンスをもらえたので。自分の得意とする形なので、もう思いきって突っ込んでいこう、と」

　さらに内田コーチに関する質問が続いたところで、冒頭で記した北川の発言が飛び出した。その胸中は、内田コーチ絡みで記事を書きたいんでしょう、となるだろうか。北川はこんな言葉を続けている。

「個人的にサイドバックとして自分がちょっと悩んでいたプレーや、こういう場合はどうしよう、という点を教えてくれましたし、自分にとっては本当にありがたいコーチだと思っています」

　たとえば先制点を決めた直後。自軍のベンチにも駆け寄り、リザーブの選手たちとも喜びを分かち合った北川は、内田コーチと1対1になり、一転して真剣な表情で臨時の話し合いの場を設けていた。