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Jリーグ 1か月前

清水エスパルス、乾貴士は憤りと情けなさを感じている。「昨季から何も変わって…」なぜ悪夢の逆転負けが起きたのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

当時と状況が異なっているのは…

 チームメイトだけでなく自分自身にも、歯に衣着せない言葉を介して忌憚なくダメ出しする。山形戦後の乾の姿は、昨年の昇格プレーオフ決勝でヴェルディと1−1で引き分け、規定によりリーグ戦の成績上位だったヴェルディに昇格への最後のひと枠をもぎ取られた直後に見せたそれと酷似していた。

 このときの乾は追加点を奪えなかった、自らを含めた攻撃陣を責めるとともに、不用意なスライディングタックルでPKを献上したDF高橋祐治の状況判断にも厳しく言及していた。

「きつい言い方になるけど、まず滑る必要がなかった。もちろん前線の選手も点を取るチャンスがあったし、取っていればああいうのがあったとしても……自分たちも悪いけど、ああいうところで滑って、無駄なファウルを犯してしまったところは反省しないといけない。(高橋)祐治自身もわかっていると思うけど、もうちょっと賢くならないとJ1にあがるチームにはなれない。自分ももっとレベルアップしないといけない」

 当時と状況が異なっているのは、清水のシーズンがまだ終わっていない点となる。

「フットボールは甘くない、ひと筋縄ではいかない、簡単に昇格はさせてもらえないと痛感させられたゲームでした。ただ、今日で悪いものはすべて出た。われわれは何も失っていないし、下を向く必要もない」

 試合後の公式会見で語気を強めた秋葉監督にシンクロするように、乾も決意を新たにした。

「(山形戦までの)空気は別に悪くなかった。今日にかける思いはみんな強かったけど、技術も含めてすべてが足りなかった。だからこそ、死ぬ気でやる。次は勝って絶対に昇格を決める。それだけです」

 栃木SCのホーム、カンセキスタジアムとちぎに乗り込む27日の次節で勝てば、その瞬間に清水のJ1への自動昇格が決まる状況は変わらない。自力で昇格を決められる状況で、目標を成就できなかったのは昨シーズンから数えて3度目。

 次は絶対に許されないと自分たちに言い聞かせ、山形に負けてもエールを送ってくれたファン・サポーターの思いを力に変えながら、乾をはじめとする清水の選手たちは敵地のピッチに立つ。

(取材・文:藤江直人)

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