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Jリーグ 1か月前

清水エスパルス、乾貴士は憤りと情けなさを感じている。「昨季から何も変わって…」なぜ悪夢の逆転負けが起きたのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「失点の原因はひとつだけじゃない」

「チームとしても、個人としても、同じ失敗をまたこうして繰り返している。自分自身も含めてですけど、こういう試合で結果を出せていない。繰り返しになりますけど、本当に情けないですね」

 昨シーズンと同じ轍は踏まない、とチームにかかわる全員が肝に銘じながら、清水はなぜ失点の連鎖を食い止められなかったのか。センターバック(CB)の安部崇士の縦パス一本で右サイドのポケットを突かれ、MF坂本亘基の折り返しをFW高橋潤哉に決められた同点ゴールを乾が悔やむ。

「もちろん相手も必死に向かってくるし、非常にいいチームです。でも…1失点目は自分たちが思っているプレッシャーのかけ方ができていなかった。できるだけ相手の右のセンターバックの方にボールを持っていかせよう、と言っていたんですけど、なかなかプレッシャーをそちらにかけられなかった。まあ、相手もバカじゃないし、やはり左の安部くんから攻撃を始めたい。その左サイドから、という失点だったので」

 安部の左足に搭載された高精度のフィード能力を警戒しながら、その安部にいとも簡単にパスを回させ、しかも蹴りやすい状況を与えてしまった。乾の悔恨は、自陣における守備にもおよんだ。

「簡単に裏を取られましたし、その後にシュートを打たれたときも寄せが甘かった、というところもあるでしょうし、もう本当にすべてですね。秋葉さんがいつも言いますけど、失点の原因はひとつだけじゃない。何個も何個も重なって失点になる。あの場面はまさにそうだったかなという感じです」

 逆転ゴールは途中出場した阪南大卒のルーキー、DF高木践がファーストプレーで与えたファウルがきっかけだった。自陣の左サイドにセットされたボールの近くに立つのは、髙江麗央と小西雄大の両ボランチ。事前のスカウティングで、清水は左利きの小西に要警戒マークをつけていたと乾が明かす。

「あれもスカウティング通りに早く蹴ってくる、というのもわかっていましたし、自分も戻らなきゃいけないところで戻っていなかった。本当にいろいろと重なって、という感じです」

 はたして、インスイングから放たれた小西のクロスは、守護神・権田修一が飛び出せないコースを切り裂きながらファーサイドへ。以心伝心で勢いよく飛び込んできた、FW後藤優介の頭と完璧に合致した。

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